1日の6割が付随業務!?部門間連携と成果創出の土台づくりとは
前回は、社員同士の意識共有やコミュニケーションの階層について触れつつ、全社ポータルの見せ方までをご紹介しました。今回は、部門間の業務連携と個人が成果創出に集中できる環境整備、ポータル導入後の効果測定についてご紹介します。部門横断のコミュニケーションや、コア業務の時間確保に課題をお持ちの方はぜひご覧ください。
【前編】社内コミュニケーションは3階層で構成される?全社のベクトルを揃える要素とは
目次
部門と部門の「つながるはずの役割」と「離れがちな考え方(認識ギャップ)」
部門ポータルになにを載せるかの前に、まずは部門の特性を整理します。
企業とは「1人や数人では生み出せない複雑なコトやモノを部門という専門組織に分けておこない、高品質で高効率に付加価値を提供できる仕組み」です。従って、本来は前工程と後工程の組織を経由するごとに付加価値が連鎖されるように整合性が取れているはずです。しかし、部門ごとに専門性を高めていくほど、部門ごとに「重視する対象の違い」と「活動の時間軸の違い」が際立ってきます。
- 重視する対象の違い
- 研究・開発部門 : 「未来の市場の動向」を重視
- 生産・製造部門 : 「製造ロットや生産計画」を重視
- マーケティング・営業部門 : 「ターゲットの客層や見込み客」を重視
- 導入・保守部門 : 「担当顧客や目の前のトラブル対応」を重視
- 活動の時間軸の違い
- 研究・開発部門 : 「3年以上」かかることを見越す
- 生産・製造部門 : 「6ヶ月先」くらいのサイクルで計画
- マーケティング・営業部門 : 「四半期サイクル」で活動
- 導入・保守部門 : 「今週・今日のタスク」の繰り返しで活動
たとえば、目の前のお客さまが営業に「この機能が追加されれば買います」というセリフは、営業サイドから見ると「一人一人の顧客ニーズをどう満たして、会社の売上目標をどう達成するか」という前向きなリクエストに聞こえますが、一方で開発サイドから見ると「個別の注文を都度受け付けていたら、将来の差別化につながる重要機能を具現化ができない」という後ろ向きに捉えられてしまうという違いが、企業のなかで随所に見られます。
ここで言いたいことは、専門組織ごとの最適化を高めるために重視する対象や活動の時間軸もそれぞれ最適化され捉えられることで、組織横断のコミュニケーションではそれが認識ギャップとなって「理解し合えない間柄」になるリスクに変わります。
それでは、この認識ギャップをどうやって超えてコミュニケーションをつなげ付加価値の連鎖を強化するのでしょうか?
部門内・部門間の認識ギャップを超えて連携強化するキモ
部門間の認識ギャプを超えて連携強化するキモは3つあります。
1.目線を上げる
部門レベルの目線では部門最適になり、そもそも他部門との連携を考慮しません。目線を上げて、部門を超えてよく見えるものを掲げる動作から始まります。
2.共通目標を作る
他部門の状況がよく見えるだけではなく、共通の目標を前後工程の部門と横断して作り、利害を一致させることが大事です。
3.自ずと連携する
目標設定だけではなく、具体的な業務のメカニズムに連携する仕組みを用意して、普段の活動が噛み合うことで、自ずと業務がつながる状態にします。
これらが集約された場所を部門間のポータルとして設計し運用することで、認識ギャップを超えて連携強化できます。
ポイントは、各部の専門性や優先順位はそれぞれ維持したまま、より上位に通底するテーマを見出し各部の業務と連動させておくことで、自ずと足並みが揃う環境を整備することにあります。現場に行くほど、コミュニケーションとは業務直結形になるので、この環境の整備が業務効率であり価値の連鎖に強く影響します。
部門ポータルデザイン
部門間ポータルに必要な要素は、会社・顧客・競合のトリプルKです。
会社情報は、全社で共有されるものよりも粒度が細かく、より具体的な内容です。部門横断の共通目標は、中期目標・短期目標としてここに掲げられます。
― 中期目標:今と3年先の姿を表現した「未来の見通し」
― 短期目標:目の前の達成状況を見える化した「現在の状況」
顧客情報はその部門が対象とする顧客にまつわる業務システムへの入り口の集約であり、もれなくダブりなくまとまり都度更新されている運用が重要です。
競合情報はマーケティングや営業だけが意識するものではなく、企画やサポートでも把握しておくものとして、業界動向のニュースクリッピングや競合の詳細分析などを共有します。競合の一挙手一投足に過剰反応は不要ですが、他社や業界の動向を常に感じ取り、顧客接点が少ない部門でも茹でガエルにならない情報取得が重要です。
業務連携の土台
部門間のコミュニケーション部分をポータルで整備することと併せて進めたいのが、業務連携の土台の整備です。
共通目標を設定したら、共通目標を達成するための関連業務も仕組みとしてつなぎましょう。目標と業務が直結し、各部門の活動が自ずと業務連携になっていきます。さらにそれらの業務データの見える化が目標達成に連動するならば、その状態をポータルに出すことにも効果があります。
チームと個人が成果創出に集中できる とは?
全社ポータルでベクトルを合わせ、部門間ポータルで付加価値の連鎖を強化したら、さらに個人が成果創出に集中できる環境整備を進めます。
日本の生産性が上がらないというデータを見かけますが、この一因は「付随業務と雑務が多く、コア業務に集中できていないこと」が大きく影響しているのではないかと思います。そしてこの領域は個人の努力では改善しづらい性質があります。最前線の社員から見た場合の付随業務は、大半が管理部門・コーポレート部門に関する情報や作業です。
実は全社ポータルプロジェクトを立ち上げて、プロジェクトメンバーにコミュニケーション課題を上げてもらうと、「情報が見つからない、手続きが進まない」などの付随業務の改善を望む声が圧倒的多数になります。従って、全社ポータルプロジェクトと並行して付随業務縮小のプロジェクトを推進することがほとんどです。
雑務・付随業務の縮小がコア業務時間確保のキモ
下図に示したように、「1日8時間労働のうち、6割になる4時間44分を雑務・付随業務に取られている」という衝撃的なデータがあります。付随業務を縮小するとは、雑務・付随業務を洗い出し、それぞれに4つの縮小の工夫(数を減らす・同時におこなう・距離を短くする・楽にする)を施し、この衝撃的に非効率な時間の使い方にメスを入れることです。全社員に共通する点が多く、全社規模で進めることで縮小インパクトも大きく現れます。
一番時間をかけている情報共有のための会議は、全社ポータルと部門間ポータルに前述のコンテンツを掲載すれば、情報共有会議はほぼ必要なくなり、2時間半を30%まで縮小できます。代わりに有意義なアイデアだしの会議や問題解決の会議に割り当てをすべきでしょう。
伝達系のメールも同じく、ポータルに重要情報・緊急情報を掲載し、それを見る習慣が全社員に身につけば、そもそも社内メールが不要かつ伝達漏れがなくなります。
そのほかの付随業務の代表格は、情報・手続き・名人を探す時間です。情報共有会議や伝達系メールなどの「社員に届けられる情報」に対して、情報検索は「社員が自ら探しに行く情報」であり、見つけやすさを整備することで、この領域がスリム化します。
1.情報を探す
情報検索と言うとGoogleのキーワード検索を思い浮かべがちですが、社内における情報検索で全体を網羅的にキーワード検索するのは最終手段です。その前に整備しておくことで、見つけやすい環境を用意できます。
まずやるべきは、「よく使う情報の入口を集約し、全社ポータルにその場所を明示する」ことです。情報検索の多くは、思いつきでキーワード検索するのではなく、なにを見つけてなにをしたいのか明確な場合がほとんどです。従って、よく使う情報の入口を分かりやすい場所=全社ポータルのサイドメニューに明示し、迷いなく目的の情報にたどり着ける経路を用意します。さらに、特定の情報保管場所にたどり着いた後に詳細検索機能が揃っていると、なお使い易くなります。
2.業務を探す 業務ナビ
よく使う情報の入口をポータルに明示したら、社内にあるすべての情報のナビゲーションとして、全業務の全情報を網羅したデータベースの整備をします。一見すると果てしない作業が待ち受けているように思えますが、実際には会社の業務は300の分類で網羅できます。2万人の会社でも300人の会社でも共通して300で収まることは、ドリーム・アーツのプロジェクト経験上間違いありません。
ここには全社共通の就業規則や稟議申請から始まり、各部門が担当する業務と情報の種類など、すべてをここに掲載する網羅性に価値があります。業務ナビは一度整えたあと、各部で情報メンテナンスを担ってもらうことで、会社としての必須データベースになります。特に新入社員や中途入社社員が情報を見つける手段として重宝しますし、ベテラン社員も含めて、この整理だけで社員の付随業務を30%は削減できます。
3.名人を探す
全社ポータルに「よく使う情報の入口」が明示され、業務ナビに「すべての業務と情報の網羅」がされたあと、もう一つ情報検索でよくおこなわれるのが「人を探すこと」です。ここで言う“人”を私たちは“名人”と捉えており、特定分野に詳しい人や特定業務を担当している人への辿り着き方が重要です。
名人を探す際、見知っている人を探すということはありません。あまり知らないけれど「あの担当はだれだろう?」とか、「これに詳しい人はだれだろう?」など、さまざまな角度から人を絞っていきます。そのため、所属部門・役職・スキル・業務内容・資格などの基本情報と、パーソナルな情報や経歴などを記載・更新・検索できる仕組みが重要になります。
部門間ポータルで付加価値の連鎖を強化し、個人が成果創出に集中できる情報整備を進めることで、「InsuiteX」を一人一人にとってのビジネスコックピットとして活用できます。
ポータル導入後は効果測定でパフォーマンス最大化
組織活性化ダッシュボードの活用
ポータルの位置付けと内容をしっかりと設計し、全社サービスインした後に始まるのがポータルの運用と効果測定です。素敵なデザインのポータルを作っても利用状況が分からないようでは、当初に狙っていた効果が現れているのか判断できません。
デザインしたそれぞれのコンテンツやページへの社員のアクセス数をさまざまな角度から計測することで、どのコンテンツは人気が高く、どのコンテンツが全員に届き、どのコンテンツに改善の余地があるのか、計測データを元にテコ入れすべき対象を見極められます。
ポータルは利用開始したその日から、その会社のバーチャルなコミュニティとなり進化し続けます。多くの社員に内容の濃いコンテンツを届け、その反応を測ることで会社が目指すべき活性化した状態へ高めていくことができます。このバーチャルコミュニティの改善の手を緩めてはいけません。
組織パフォーマンス最大化の関係要素
全社ポータルで会社の理念や中期経営計画を浸透させ、部門ポータルで役割の遂行と連携を強化し、付随業務縮小の情報検索を改善することで社員一人一人の成果創出を向上します。
これが会社における、あるべき情報とコミュニケーションの環境整備です。この環境整備それぞれの要素の整合性とバランスをとることで、組織全体のパフォーマンスを最大化することに貢献できるのです。
いかがでしたでしょうか。
前編・後編の2回に渡って、組織の情報と社内コミュニケーションの環境整備についてご紹介しました。普段あたりまえにおこなっている社内コミュニケーションや情報のあり方を見つめ直すきっかけになれば幸いです。
ご紹介した様々な課題を解決できる「InsuiteX」をより詳しく知りたいと思った方は、ぜひお問い合わせください。
執筆者
栗木 楽(くりき らく)
株式会社ドリーム・アーツ 協創パートナー推進本部 副本部長